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「オオアオキガサワ」

※散文中に登場する市場や銘柄、報道内容等は架空のものです。

(以下、散文)

土曜の朝、洗濯物を干し終えてブラっと喫茶店に立ち寄った。

2月の終わりということで日差しの中に僅かではあるものの春の気配のようなものを感じ取ることもできたが、

一方では、空気に冷たさが依然として残っていた。

 店に入ると、満席状態で諦めて退散しようとしたその時、接客係の女の子が、

「相席でよければ確認とりますが?」

と声をかけてくれた。

せっかく声をかけてくれたものを無下に断るのも気が引けて、

「ありがとう。」

と受け入れた。

彼女は迷うことなく、空席が一つあるの四人掛けのテーブルに向かった。

着席状況を的確に把握していたのだろうと感心した。

こういった接客の良さもこの店が人気で現に今朝もこの盛況ぶりなのだ。

もちろん、コーヒーやモーニングセットのレベルも高く、その割にリーズナブル。

おまけに内外装やBGMもセンス良くもいい。

どうやら相席の了解が得られたようで、彼女は笑顔で戻ってきた。


四人掛けのテーブルのテーブル脇で

「すみません。」

と軽く頭を下げ、空いている手前の席に着席した。

オーダーは、さっきの彼女に既に済ませていた。


どうやら三人は同行者あるいは顔見知りのようだった。

一つ端末を使って同じ情報を共有していた。

突然、三人のうちの一人が自己紹介を始めた。

といっても、三人の名前を私に告げるだけのもので、それ以上でもそれ以外でもなかった。

予想外の出来事に自分の名を告げるのタイミングを逃してしまった。

沈黙が重かった。

それだけではない、最後に紹介されて一人の名前があまりにもインパクトが強かった上にまどろっこしかったのだ。

おそらくは、先の二人の流れからして名字なのだろうが、

「オオアオキガサワ」

この八文字に及ぶ名字を、理解し受け入れそして忘れないようにと全神経が釘付けにされていたのだ。

現に「スズキ」だったか「サトウ」だったかあるいは「ヤマダ」だったかもしれない、平凡で単純な先の二人の名前が何だったのかさえも覚えていなかった。

記憶の沈黙も重かったのだ。


その時、端末に表示された情報に三人の意識が集中しているのが分かった。

三人の間にも思い沈黙が漂っていた。

盗み見するつもりないが、テーブルの中央に堂々と置かれた端末が表示している情報がなにかは視界から外すことは不可能だった。

「AMZ PM-G56」

三人が共有していた情報は、マーケットの速報値だった。

積極的にこの銘柄の情報に関わろうとしない第三者でさえ、この銘柄のことは知っていた。

ここ最近、トップニュースで報じられているからだ。

続落に続落で歴史的な暴落を記録し、数日前、僅かではあるものの相当久しぶりに反発したと報じられていた。

直感的に三人が損失を抱えていることを理解したことで、さらなる沈黙の深みに嵌っていた。


沈黙に支配されながらもある洞察と思考が開始されていた。

向かいにいるのが、「オオアオキガサワ」、

横と斜向かいの二人は、「オオアオキガサワショック」で名前が記憶の中で沈黙した「オオアオキガサワ」以外の多分平凡でシンプルな名前だったはずの二人。

その三人の顔を視界の外側ギリギリの部分で繰り返し追っていたのだ。

何のために?

「オオアオキガサワ」以外の二人はそうでもないのだが、

「オオアオキガサワ」の横の一人と「オオアオキガサワ」は何となく似ている。

「オオアオキガサワ」の斜向かいの一人と「オオアオキガサワ」もまた何となく似ているのだ。

さらには、「オオアオキガサワ」の向かいに座っている自分と「オオアオキガサワ」は、「瓜二つ」であることに気付いたのだった。

今朝、出かける前に髭を剃るために見た鏡像がリピート再生されているようだった。

今朝読んだ本に「鏡面対称」という言葉があったかどうか帰って確認しようと思った。


洞察が終わると、再び沈黙の存在が厄介に感じられてきた。

ここでモーニングを食べながら読もうと持参してきた書簡のことを級に思い出し、上着の内ポケットから取り出したとき、

先程の接客係の女の子が、テーブルの上にモーニングセットをとびきりの笑顔で運んできてくれた。

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[ 2018/02/24 16:55 ] 散文集 | TB(0) | CM(0)

「一本道ワイナリー」

噂は、どうやらほんとうだったようだ。

初めのうちは一部の熱狂的なワイン通の間でのみ囁かれていたらしいのだが、

やがてワインには興味のない人々にも都市伝説的に広まっていったとされる「一本道ワイナリー」。


ワイナリー自体の住所や正式名称は不明とされており、カーナビにも表示されない。

ところが、そこまでの道順に関する情報は、ネット上など溢れかえっており、

一部に異なる情報もあるようだがそのほとんどが同じである。

そして、それは人里離れた僻地などではなく、片側三車線あるような主要国道を利用して行けるのだ。

その道程は、まさにシンプル。

主要国道からおりると、おりるというよりも主要国道脇といっていいだろう場所にあった。

といっても、ワイナリーがあるわけではなく、そこにあるのはその名の通り「一本道」。


もう少し詳細に説明すると、主要国道と県道が交差する信号機のある交差点に信用金庫がある。

当たり前だが信用金庫は、カーナビにも表示される。

その信用金庫の手前に国道から2~3メートル程度低くなった採掘場に下りるための入り口がある。

それを下りると、野球場3~4個分はあるだろうか、広大な土の地面が広がっている。

その奥にぐるっと周囲を囲むようにして見上げるような土が剥き出しの壁面がそびえ立っている。

そして、その中央ではなく、信用金庫側に寄った位置に「一本道」があるのだ。

それは、スキーのジャンプ台を横方向に圧縮したように細い形状で、急な傾斜はスキーのジャンプ台そのものだった。

広大な土の面とそのスキーのジャンプ台のような急傾斜の接する傍らに案内板がたてられていた。

案内板には、ほぼ真上に向いた矢印が急傾斜の頂上に向いて記されていた。

そして、矢印の下に「ワイナリー」という文字が書かれていた。


そこが、未だ誰も辿り着いたことも、見たこともない幻のワイナリーの入り口だった。


ドローンなどが普及する昨今だが、周囲を囲むようにしてがそびえ立っている見上げるような土が剥き出しの壁面の上の様子はおろか、ワイナリーの映像などがネット上に公開されたことはない。

[ 2018/02/20 09:36 ] 散文集 | TB(0) | CM(0)

リンゴのはなし。

リンゴのはなし。

実のなったリンゴの木の前でその実が落ちるのをじっと見ているゆとりはないだろう。

仮に、ベンチに座っているとき、道を歩いているとき、どんなときにせよ、

たまたま視界にリンゴの落ちる瞬間が入り込んできたとしても,、

何かを発見する能力は持ち合わせていないだろう。

仮に偶然に出会う運と発見する能力を持ち合わせている人がいたとしても、それは、極めて少ないだろう。


でも、もし、目の前のテーブルの上にリンゴが置いてあったとしたら、ほんの少し眺めるくらいのゆとりはあるかもしれない。

眺めているうちに「パクッと食べてやろう」だとか、「絵に描いてみよう」とか、「触れてみよう」とか、「動かしてみよう」とか思うことはあるかもしれない。

さらに、リンゴの横に果物ナイフが置いてあったとしたら、それを使って「皮をむいて食べてやろう」とか、「食べないにしろ皮をむいてみよう」とか思うかもしれない。

「食べるにしろ食べないにしろ、どうせ皮をむくのなら途中で切れないように細く長くむいてみたい」と思うかもしれない。

いや、一度くらいはやってみたことがあるかもしれない。

もしも実際にやってみたことはないにしても、間違いなくそう思うくらいの好奇心とチャレンジスピリットは、どこかにきっとある。

むしろ、あって欲しい。

リンゴの上からむき始めるか、下からむき始めるか、そこは好みで分かれるところかもしれないが、

目の前のテーブルの上にリンゴ、その横に果物ナイフが置いてあったら、途中で切れないように細く長く皮をむいてみたいと思う人は、案外多いかもしれない。

この状況に面しても、「途中で切れないように細く長くリンゴの皮をむいてみよう」とは、どうしても思えないにしても、

「縦方向に何度か切って、リンゴを櫛形にして皮をむいてみよう」と思うかもしれない。

こういった場合も、「簡単な8切よりも、少し難しい10切に切ってみよう。」と思うくらいの好奇心とチャレンジスピリットを持っていてもいいかもしれない。


文字盤の動く時計のある部屋で、椅子の余る椅子取りゲームをして、

そこにリンゴと果物ナイフの置かれたテーブルがあって、途中で切れないように細く長く皮をむいてみる。

するとタイムマシーンが・・・。

それが リンゴのはなし。

[ 2018/02/15 19:35 ] 散文集 | TB(0) | CM(0)

目を覚ました次の瞬間の表情は、予想外にウェルカム

メットを被らずに原付に乗ることについて口論になったようあったので、小高い丘に見える例の殿堂にメットを買いに行った。

本体は白、バイザーは無色透明、ダサいものしかなかった。


 ベッドでメットに装飾を施す傍らで眠っていた。

作業音で目を覚ますだろうことは予測していた。

ただ、目を覚ました次の瞬間の表情は、予想外にウェルカムなものだった。


前回訪れた時とは状況が変わっていることは、なるほど、母親の様子からもすぐに見て取れた。


事故現場周辺は、野次馬があふれていた。

店内では、イチゴの箱詰めに関して揉め事が起こっていた。


予想していた通り、母親とひと悶着あり、風呂に入っている間にウェルカムな目が本性をむき出しになった。








[ 2018/02/12 02:51 ] 散文集 | TB(0) | CM(0)

古のミナモトタメのこと

「ヒャックシンッ!!」

また例の間の抜けたくしゃみがどこからともなく聞こえた。

「義」寄りて135去り朝を呼ぶ。

フジの原っぱ頼ること長き。

古のミナモトタメのこと204 2018.02.08

[ 2018/02/08 10:29 ] 散文集 | TB(0) | CM(0)
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