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胸踊

 自転車の前籠の大きな荷物を2つを押さえながら地下の駐輪場から通路を上ってゆく彼女に彼は駆け寄り「手伝うよ」と彼女に代わって自転車を押し始めた。



このときの二人のきらきらとした胸踊の表情は、遠い過去、高校生の頃のそれそのものだった。

秋から冬へと移ろう季節の空気の中で彼女の白いセーターが印象的だった。



彼は、彼女のことを「かわいい」と思っていたことに気付いた。

美人で仕事もできる彼女は周囲から「キツい」という評価を受けていた。

彼は、彼女に対し全くそんな印象がなかった。

彼に対する彼女の態度は、下心に満ちた他の男性社員に対するそれとは異なっていた。

同僚に出産のため実家に帰省していた妻の母から連絡があった時、彼女は鞄から祝儀袋を取り出した。

祝儀袋を持ち歩いているところはいかにも彼女らしい。

それを見た彼が便乗を申し出た。

彼女は財布から1万円札を取り出し祝儀袋に収めた。

彼は、ポケットから財布を取り出そうとした。

彼女が「いつでもいいよ」と彼が財布を開くのを制した。

「すいません、必ずお返しします。払えないときは体でお支払いします」と彼は、冗談を言った。

「わたし、そのほうがいいな」と、彼女は応えた。

その瞬間、彼は彼女が自分のことを対象としていることを確信した。

彼には妻があり、小遣いの少ないことも彼女は知っており、懐事情にも気配りをしてくれていた。

対象者の彼にガードはなく柔和な接し方をしていたことが、彼の彼女に対する印象から「キツい」を排除していたのだ。

彼女にも夫がおり、子供までいる。

世間を騒がせた「ゲス恋」・・・、いや、ふたりはまだ、きらきらと胸踊しただけだ。




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[ 2016/12/09 13:15 ] 散文集 | TB(0) | CM(0)
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