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栗鼠が生まれて23:47発夜行列車

「栗鼠が生まれた」という知らせをよこしたのは、エイゾウだった。

そして、優美に遭ったのも同じ日だった。

知らせを聞いて、すぐさま駅に向かった。

もうすぐ日付の変わりそうな23:47発の夜行列車にぎりぎり間に合った。

こんな時刻の列車に一人きりで乗るのだろうか、階段を急ぎ足で下りていると、

紅いコートを着た若い女が一人ホームに立っていた、

階段を下りきったとき女が、夜行列車に乗りこむ姿が見えた。

私も急ぎ足のまま列車に乗りこんだ。

ドアが閉まり列車は、ゆっくりと動きだした。


やがて窓越しに漆黒の闇しか見えなくなった。


「23:47」

この時刻を目にしたとき、子供たちに「23:47」は、すごい時間だと嬉しそうに話している男のことを思い出した。

「なるほど」、私も同感だ。

と、思った瞬間、男が「23:47は、凄い時間」だと主張する理由を子供たちに明かした。

私は彼の主張する理由を聞いて、同意の意思を示すために挙げかけた手をそっとおろし膝の上に置いた。

彼の理由では、23:47のオンリーワン的なカリスマ性を十分に子供たちに伝えきれていないような気がしたからだ。

案の定、子供たちのリアクションも冷めたもので終わってしまった。

13:13、13:23、13:37、13:47、23:13、23:23、23:37。

これらもすごい時間になってしまう。

すごくないわけではないが、やはり、というよりもむしろ23:47は別格なのかもしれない。

男が「ルジャンドル予想」や「ゴールドバッハ予想」のような素数関連の未解決問題を解く確率は、自然数の中に存在しない。


列車のデッキでそんなことを思いながら、少し乱れていた息を整えた。

扉を開け、切符に記された座席番号を探しながら客室内を進んだ。

乗客はほとんどいない。空席ばかりだった。

そして、自分の座席番号を見つけ腰掛けようとしたとき、紅いコートの若い女が私の席の一つ奥に座っていた。

「失礼」と声をかけ隣に腰掛けた。

女はこちららを一瞥しただけで何も言わなかった。

暫くすると女は、席を立ちどこかへ行った。

トイレにでも行ったのだろうとと思っていたが、女はとうとう戻ってこなかった。

うっかり忘れてしまったのか、「優美の日記」と書かれた日記帳のようなものが、姿を消した女の座席に残っていた。

忘れ物として駅に届けておいてやろうと思い、私は日記帳らしきものを手にした。

やがて列車は、終点に到着した。

そう、私の目的地「栗鼠が生まれた」町に行くにはここで下車するのだ。

列車を降りた私は、携帯をチェックした。

2件の留守録と十数通のメール着信があった。

その中に急ぎの要件が含まれていてすぐに連絡しようと急いで改札を出て連絡を取った。

電話を済ませた時、日記帳を届けることを思い出したが、既に駅の業務が終了していた。

そのままホテルに直行してチェックインした。

なぜか、なかなか寝付くことができなかった。

何か連絡先のようなものは書かれていないかと紅いコートの若い女の忘れていった日記帳の表紙や裏を見た。

しかし、連絡先のようなものは記載されていなかった。

いけないと思いつつ日記の部分のページをめくってしまった。

「優美」という名前の通り、優しさを携えた美しい文字紙面にちりばめられていた。

日記の内容は、その文字や文体の優美(ゆうび)さとはかけ離れたものだった。

しかし、不思議なことに彼女の綴った情景のすべて、人物のすべてがまろやかな画像として浮かんでくるのだ。

まるで見えない霧のベールが建物や景色や人といったすべてを覆い、輪郭が柔らかくなったように。

あるいは、優れた職人が建物や景色や人といったすべての輪郭を鉋か何かで精巧に面取りをしてしまったかのように。

色彩は、陰影ははっきりしているが、少しぼんやりとした感じで全体的に柔らかさを感じさせる。

「紅いコートを着た若い女は優美・・・」

いつしか私は深い眠りの底にいた。

あの日、美人の蝉の声を聴いたのは、一度きりだった。

[ 2017/10/03 19:31 ] 散文集 | TB(0) | CM(0)

SHVLINEの覚書

YY⇒SH or SH⇒YY

だったが、

SH⇒FN

から、

FN⇒YM

で、

SH⇒FN⇒YM

そこから

YY←SH⇒FN⇒YM

SHVLINEの覚書。

[ 2017/09/30 19:37 ] 散文集 | TB(0) | CM(0)

美人の蝉とMJとササミのスジと時々スプリヌゥードの片道書簡と

昨日、不完全な乾き方をしていた洗濯物の一部を取り込み、薄手の毛布を秋晴れの日差しの下に干し、

トイレの掃除を済ませた。

FMラジオを聴きながら暇(か)眠したのは、それよりも先だったか後だったか、そんなことはどうでもよい。

窓辺に椅子を置いただけの特等席で出迎えてくれたのは、、

レースのカーテン越しに差し込む陽光と、網戸をすり抜けて部屋に入りこんできた空気の流れだった。

空気の流れは、レースのカーテンを撫でるように押して部屋に入り、レースのカーテンに包まれるように柔らかく方向を変え、

窓の下の壁を伝うように足元に降り裸の足を少しヒンヤリとさせた。

そこで、読み残しのままになっていたスプリヌゥードの片道書簡に久しぶりに目を通した。

MJが玄関の呼び鈴を鳴らし訪ねてきたのは、正午よりも前だったか後だったか、そんなとこともどうでもよい。

玄関を開けた時、満面の笑みと少しのたばこ臭と直面した。

MJを家の中に招き入れた。

MJは、おしゃべり上手だ。いつも。

MJは、一人でおしゃべりをする。少年のような少し高い声で、とてもリズミカルに。だから放っておけばよい。

MJのおしゃべりを聴きながら、夕飯の仕込みをした。

割りばしを使い、ササミ3本のスジを取り除く。

冷凍したものを解凍して使わなかったからだろうか、MJのおしゃべりみたいにとても上手くスジを取り除くことができた。

ササミのスジを上手く取り除くことができるのは、とても気分いいものだ。いつも。

上手におしゃべりしているMJもきっととても気分いいのだろう。

そう、上機嫌。おしゃべり上手のMJも。

干しシイタケを3枚、水で戻した。

干ししいたけの在庫が2枚であることに気付いた。

秋晴れの少し強い日差しに誘われたのか、少しばかり季節外れの蝉が産声を上げた。

上手に鳴いている。鳴き声も標準的で美しい。

きっと、美人の蝉だ。 せめて美人の蝉であって欲しい。

きっとMJも、思った。

きっと、美人の蝉だ。せめて美人の蝉であって欲しいと。

MJの上手ななおしゃべりは、上機嫌に続いている。月の上をふわふわと歩くように心地良く。

MJの後ろに付いて上がり込んでいたBPのことを思い出した。

コーヒーを飲み終わったら、BPには・・・そうだ、牽制球の話でもしてやろう。

9月29日は、美人の蝉の誕生日。
[ 2017/09/29 14:32 ] 散文集 | TB(0) | CM(0)

「WとL」と「LとH」と「WとLとH」、そんでもって「セープ」

えりをえり子と思っていたように、WをLと思っていた。

そんなことは、きっと人生にはよくあるほんの些細なことなのかもしれない。

そもそもWを知らなかったわけで、脳がそれを処理するときにLに置き換えただけのことだろう。

なえなら脳にとっては、未知のWをチョイスすることは不可能なことで、

Lが適当でまったく違和感がなかったのだろう。

ところで、といわれればここでWとLの話とは違う話になるのが世の常で・・・

Hでも強ち悪くないような気がしてくるから不思議なもんだ。

とは言っても「WとL」、「LとH」の組み合わせがなんとなくよくて、

「WとH」も悪くはなさそうだが「WとLとH」にした方が「WとL」、「LとH」のなんとなくよい組み合わせに近寄る感じだ。

とりわけ「LとH」は、あの世界的な逸話?あるいは迷信?はたまたおまじない?的で、それでいてオヤジの駄洒落的で、

何となく目から鱗がはがれる感触を体感しているようで「セープ」。







[ 2017/09/28 18:49 ] 散文集 | TB(0) | CM(0)

そこに1人きりの人を見かけたとき「ボーン!」

5回以上は自信があるが10回以上はない。

ならば8回くらいだろうか・・・。

などと、ふと頭の中で記憶の糸を手繰ってみたのは、そこに1人きりの人を見かけたときだった。

「ボーン!」

頭の中に1人きりは0回であるという揺るがない確信が打ち立てられた。

そして、おそらく、個体差はあるだろうが15分~30分は要するだろうこの行為。

あの人は、1人きりで何をするのだろう?という、何となく答えのみつかりそうな疑問と、

どこに座るのだろう、それとも立ったままなのだろうか?などという、なんとなく答えのみつかりにくそうな疑問が同時に浮かんできた。

そんなことを考えながらも1人きりは0回であるという揺るがない絶対的な確信と、

もしかすると10回以上だったかもしれないという記憶の覚醒が私の中で葛藤を生んだ。

8回はゆうに超えている、それどころか・・・

時間経過とともに10回以上という自信を纏った結論に落ち着き、その全てが複数人で、

1人きりは0回という寝心地の良いベビーベッドの上で、ついさっき激しい産声を上げた葛藤は静かな寝息を立てて穏やかな眠りに就いた。

そして、今後1人きりでこの行為をすることがあるのだろうか?、

もしその時が訪れたとして、私はどこに座るのだろうかそれとも立ったままなのだろうか?

そして何となく答えはわかっているのだろうが、何をするのだろうかということについてもついでに夢想した。

あの日、あの時、あの人をあんなところで見かけなければ、考えもしなかっただろう。

[ 2017/09/28 09:25 ] 散文集 | TB(0) | CM(0)
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